今回ご紹介するのは「輪(まわ)るピングドラム」というアニメ。
「少女革命ウテナ」などを手掛ける「幾原邦彦氏」が監督・脚本・構成をする奇想天外な難解物語。
ある家族に起こった悲劇を運命に抗いながらも突き進んでいくハートフルミステリー。
今回はこの作品、通称ピンドラの考えさせられる魅力と面白さを伝えます。
同じく考えさせられアニメとして「トラウマアニメ!『妄想代理人』が隠れた名作で面白いんよね…。」や「心が痛い鬱アニメ『カラフル』は一生に一度は観て欲しい。」なども記事で紹介しておりますので是非ご覧ください。
さぁ、生存戦略はじめましょうか。
『輪るピングドラム』(2011年・24話)
幾原邦彦(少女革命ウテナなど)氏が「家族」をテーマにしたオリジナル作品。
作風の特徴として「記号的表現」による場面転換で、『自動改札機』『発車標』をピクトグラムで作画される一風変わった雰囲気のアニメ。
「(赤い)リンゴ」と「(変な)ペンギン」が色々な表現で登場しているのも見物で全く理解ができない。
平成23年度での『文化庁メディア芸術祭アニメーション部門』で審査委員会推薦作品/長編(劇場公開・テレビアニメ・OVA)を受賞。
キャッチコピーは、
- 「きっと何者にもなれないお前たちに告げる」
- 「僕の愛も、君の罰も、すべて分け合うんだ」
『輪るピングドラム』ストーリー
兄弟である「高倉冠葉(ジャイアン赤髪の)」と「高倉晶馬(東のエデン青髪の)」の妹である「高倉陽毬」は余命わずかと宣告されていた。
陽毬の願いに応える為に想い出の場所である水族館へと出かけるが案の定彼女は倒れてしまう。
さらに不幸は重なり搬送先の病院で息絶えてしまうという事態に陥る。
そんな悲嘆に暮れていた冠葉と晶馬の前で突然”水族館で買ったペンギン型の帽子”を被った日毬が「生存ー戦略!」の掛け声と共に蘇生するという奇跡が起きる。
奇跡を喜んでいるのも束の間、何故かペンギン帽子を被っている間に限り、陽毬の様に見えるが陽毬ではない別人格「プリンセス・オブ・ザ・クリスタル」に変わるという奇妙な状態になっていた。
そして別人格の「プリンセス」は陽毬を助けたければ「ピングドラム(何それ)」を手に入れろと二人に命じる。
色々と指令が送られて女子高校生・荻野目苹果の調査をすることになるがそれは過去に起こった「TSM荻窪線沿線」事件が繋がっていたってお話。
『輪るピングドラム』主要登場人物
『高倉 冠葉(たかくらかんば)』(VC. 木村昴)
高倉家の長男で双子の兄。美男系ジャイアン。16歳。 緑色の瞳を持つ赤い髪の少年。
男前で活発な性格で圧倒的に女性から人気があり恋人がつきないが、本当は妹の陽毬を一人の”異性”として愛している。
『高倉 晶馬(たかくらしょうま)』(VC. 木村良平)
高倉家の次男で双子の弟。16歳。東のエデンの滝沢。 妹の陽毬を病的なまでに溺愛している。
兄とは違う穏やかな性格で常識人で荻野目苹果の日記を奪う為に彼女と行動したらえらいことになるファンキーボーイ。
『高倉 陽毬(たかくらひまり)』(VC. 荒川美穂)
高倉家の双子の妹。
不治の病持ちであり突然命を落とすがよくわからないペンギンの帽子で復活して「プリンセス・オブ・ザ・クリスタル」という別人格になる。
普段は天真爛漫な美少女であり、辛く貧乏な生い立ちもあり『非常にささやかな幸せ』が一番と思っている。
双子からは異性として好かれているが、本人は気づいていない。
『荻野目 苹果(おぎのめりんご)』(VC. 三宅麻理恵)
滝沢…じゃなかった晶馬(青髪の)が陽毬を救うために調査していた人物で16歳でストーカー。
興味があることには視線をそらさない、照れると前髪をぐちゃぐちゃするなどの癖がある。
彼女の学校での評価は成績や人格は共に優秀だがメンタルブレイクな面がある為によくわからない行動や夢想に耽ける傾向があり、感情を爆発させたりすることもあるので一番見ててイライラするのもキーポイント。
過去に両親が離婚した事により家族崩壊している。プロジェクトM。ディスティ二ーが口癖。
『渡瀬 眞悧(わたせさねとし)』(CV. 小泉豊)
ピンク髪の謎で危険な男性。口癖は誰もが物真似する「シビれるだろう?」「だよねぇ」など。格好良い。
図書館の司書をやってるが凄く怪しい。 常に穏やかで感情の起伏がバグっている「メタファー的性質」を持っている。
常に何言ってるかわからないので他者を煙に巻くスタイルを取るが悪い人ではないと思う。
『輪るピングドラム』で考えさせられる魅力は?
私たち現代とリンクする『ある事件』の話が深い、テロ事件
出典元:輪るピングドラムから引用
作中ではあるテロ事件を起こした宗教団体を彷彿させてきます。
1995年3月20日に起きた「地下鉄サリン事件」を主にしているのを彷彿させる描写がいくつもあり、本作では過去に起きた「爆発事件」となっていますがあきらかにそう。
これに対しての兄弟達が関わってくるのが大きなポイント。
『輪るピングドラム』の世界では現実に起こった社会的問題をとらえているので絶対に無視はできなくなっています。
多分、この作品が唯一この話題を取り上げて描写している。
ある話数の不気味で意味深すぎるカット場面はまさにこの描写を捉えているのではないかと大きく感じ、赤い吊り輪に「95」という意味深な数字や、色々と「95」に関わる事件は全て繋がりとても考えさせられる作品になります。
ウテナは映画が私の生まれ年だから「なるほど〜こんなのごあったんだ〜」で見てたけど、ピングドラムはリアルタイムだったし知ってる事件だししんどいし、ユリ熊嵐は理解が追いつかんかった
— たむ子 (@ria05110511) June 21, 2019
幾原監督が示した家族という大きなテーマが鍵
出典元:輪るピングドラムから引用
作品の途中で分かることではあるが「血の繋がりがない家族」という大きなテーマが見え隠れします。
監督は「血の繋がりをもたない家族」をミスリードを加えながら色々と描写していて、色々な形が増えている家族の形がマッチし「子供は親を自ら選ぶことができない」ことを「運命」と割り切るのは本当に良いのかという点についても憶測が広がります。
特にピンドラの中で一番ゾっとさせられたのは、『子どもブロイラー」という児童養護施設です。
『選ばれなかった子供』『いらない子供』を対象にし、児童が引き取られていく施設で最後には子供が『透明』になって消えるという機械まであるという。
この世界観が現実とリンクしていると言っても過言では無い、注目ポイントでもあります。
ピンドラ的に言うとレオはこの世界に要らない子どもだった。いずれは子どもブロイラーで粉々にされて透明な存在になる希薄な存在であった。だがマブという存在に選ばれて運命の果実を一緒に食べたんだ。
— 無心 (@ihciuy0727) June 15, 2019
誰かとの繋がりは自らの存在意義を認識
出典元:輪るピングドラムから引用
「人は生きている限りは何かしらのしがらみが生まれる」
血縁や地縁、同級、仕事、趣味など様々なの縁など色々な繋がりは面倒ではあるが、決して切れてはいけない大切なしがらみ。
陽毬(妹)が作中で「生きているのは罰をうけるということ」と言うセリフは、言葉の重みに対しては日常的に少しイラっとする程度の小さなことだったり些細な事。
自分の周りに広がる縁は「面倒」と思うことを「罰(しがらみ)」に変えて捉えられるのが陽毬の言葉の真意なのか、その辺りも見ていて色々と考えさせられます。
そして、プリンセスが吐くセリフに「きっと何者にもなれないお前たち」というのがあります。
色々な「愛」、人との「繋がり」、そういった「しがらみ」などの世界を全て視界から消えて完全に『透明』になっている人を指していると考えられます。
だけども、自分が「何者」であるのかという答えを導き出すのは他ではない”他人”であり、何かを失いそうになった時に手を差し伸べてくれるのが無情の愛であると認識させられる。
ピンドラ見てて思うのはももかちゃんはピングドラムとか関係なく妹の林檎ちゃんをしがらみから解放してあげたかったんじゃないかなぁとも思う
— 毎週月曜0時に死ぬごりあ (@PitoPeto) October 27, 2018
重圧なテーマの中でも、監督が関わった作品のオマージュ演出
出典元:輪るピングドラムから引用
幾原監督関わった作品でもある、「セーラームーン」や「少女革命ウテナ」などの演出を所々魅せて来るのが長年のファンからは胸熱なところ。
特に「これは少女革命ウテナか!?」と思わせるカットは、観るものを重いテーマから癒しへと変えるのは監督の手腕としか言いようがありません。
EXTRAにはウテナのオマージュも入ってるから見る価値はあると思うんだけど、終盤の展開が人によっては傷口を開くようなことになりやしないかという心配が……。ピングドラムも怒涛の展開続きだったし、あの監督の方向性って本当にずっと変わらないんだろうな。
— 鷹実 (@_Tkm) June 2, 2019
最後に。
この作品は家族をテーマに色々なしがらみ、愛、事件などをミスリードしながら展開していきます。
最後まで奇想天外な物語に一風変わった感じで鑑賞でき、とても面白い。
少しでもピンドラに興味をもって色々と考えてもらって楽しんでもらえたら嬉しいです。
ではでは!
ピンドラ紹介する魁堵(かいと)でしたー!